幸せの原点は日本型福祉にある

 健康であることは、幸せの必須条件です。いくら経済的に恵まれていても体の調子がすぐれないと人は幸せを感じることができません。日本人の健康で幸せな生活を支えてきたのは日本型福祉で、その中心となっているのが国民皆保険制度です。これは、世界に誇れる素晴らしいシステムです。しかし、TPP(環太平洋経済連携協定)により今後、大きく変えられてしまう可能性があります。
 TPPの大筋合意で、日本はサービス業の投資の受け入れについて大幅に譲歩しました。今後、アメリカはさまざまなかたちで日本の保険制度の見直しを要求してくることになるでしょう。日本には皆保険制度があるため、外資は保険で思うようにお金儲けができないでいます。高額な保険料を支払わなくても国民の誰もが一定の水準の医療の恩恵を受けられるので、わざわざ高額な医療保険に加入する必要がないからです。
 この皆保険のシステムは、TPPによって私たち日本人がそれと気づかないうちにじわじわとアメリカをはじめとする外資に浸食されていくことになりかねません。アメリカが求める保険制度の見直しは、私たちが気をつけていないと、一見便利になるように感じられる小さな変化の積み重ねで実現されてしまうかもしれないのです。
 アメリカは1994年以来、「年次改革要望書」で日本に対してさまざまな要求を突きつけてきました。年次改革要望書というのは、「日本政府への米国政府の年次改革要望書」のことで、ほぼあらゆる分野にわたってアメリカの都合のいいように日本の制度を変えるよう要求しているリストです。
 このリストに毎回入っていた要求の1つに、混合診療を認めるよう求める項目があります。混合診療というのは「保険診療と保険外診療の併用」のことです。日本では現在、一部の先進医療のみ例外として混合診療が認められているだけです。混合診療が広く認められるようになると、保険外診療を高額なお金を払って受けられる人と、受けられない人の差が広がってしまいます。そして、高額な医療費を支払うことができる人のための保険料の高い保険が登場することになります。高い保険料を支払うことができない人は、高度な保険外診療を受けられなくなってしまうのです。
 私は、アメリカのような競争社会型のシステムではなく、互助の精神を基本にした日本型のシステムで下記のような福祉政策を推進していきます。 

  • ❶日本型福祉の中核である国民皆保険を維持する。
  • ❷身近な存在である民間中小病院を維持し、救急医療体制を確立する。
  • ❸要介護予防のために、要支援体制を強化し、同様に医療についても予防医学を推進する。
  • ❹急速に進む高齢化社会に対応した介護体制を確立する。
  • ❺女性の社会進出支援策として子育て支援策を強化する。
     (とくに保育施設について現実に即応するフレキシブルな体制を整備する)。
  • ❻定年退職者の再就職支援で生涯現役を可能とする。

競争社会では安らぎは得られない

 TPPでアメリカは、自分の国のルールを加盟国に当てはめようとしています、当然、日本にもアメリカのルールに従うよう求めてきます。それがTPPなのです。そして、アメリカのルールとは、競争第一主義です。しかし、日本ではこれまで、互助の精神で福祉を考えてきました。私は、この互助の精神のもと、日本型福祉を大切にしていきたいと考えます。
先にあげた政策について、1つずつ説明していくことにしましょう。

❶日本型福祉の中核である国民皆保険を維持する

 前項で述べたように、国民皆保険制度は日本が世界に誇る素晴らしい制度です。これにより、 お金持ちもそうでない人も、同じ医療の恩恵を受けています。最先端の医療だからといって高額 な治療費が必要になることもなく、誰もが求める最善の医療の恩恵を受けることができているのです。 私は日本のこの素晴らしいシステムを少しでも傷つけるような改悪を断固として許しません。 日本人の健康、そして幸せを守るために警鐘を鳴らしつづけます。

❷身近な存在である民間中小病院を維持し、救急医療体制を確立する。

 救急医療には、休日夜間急患センターや救急歯科診療室などの「一次救急」、病院群輪番制やセンター方式/共同利用型病院などによる「第二次救急」、高度な処置を行う救命救急センターや高度救命救急センターといった「第三次救急」の3段階があります。
  一般の医療についても、症状の軽い患者に対応する医院などの「一次医療機関」、医療設備が整っていて医院で扱うことができないような入院や手術などができる地域の中小病院などの「二次医療機関」、中小病院では扱えないような高度な医療を行う大学病院などの「三次医療機関」があります。
 風邪で熱が出たからといっていきなり大学病院の救命救急センターに飛び込む人はいないでしょうし、仮にそんなことをしても受け付けてくれません。しかし、ちょっとした風邪でも大学病院で診療してもらおうとする人は少なくないのです。
 このような流れを変えるために、2013年4月から、大学病院や国立病院機構、ベッド数500床以上の地域の大病院のなかで地域の中小病院と連携のとれていないところでは特別料金を徴収することが認められています。さらにいま、紹介状なしに大病院を受診する場合に、5000円もしくは1万円の初診料を徴収することが検討されています。
 このように、料金で差をつけていくのも1つの方法かもしれませんが、本来は患者が近所のかかりつけの医師に相談し、入院や手術が必要な場合は地域の中小病院を紹介してもらい、さらに難しい病気については大病院を紹介してもらうというように、患者の意識改革を図ることがより大切だと考えます。
 医療費抑制の観点からも、このシステムは大切です。中小の病院でしっかり健康診断してもらって病気の早期発見ができれば、医療費の抑制につながります。また、近所にかかりつけの医師がいれば、病気が進行して重篤な状態になる前に治療することができます。
 こうした意識改革を実現するためには、住民の方々に地域のコミュニティ単位の医療体制に馴染んでいただく必要があります。小学校、中学校などの地域単位の医療支援、啓蒙を通じてさまざまな取り組みを地域の医師会と連携して行い、医療を身近に感じていただくとともに、地域医療体制が根づくよう積極的な施策を推進していきます。

❸要介護予防のために、要支援体制を強化し、同様に医療についても予防医学を
 推進する。

 日本は満65歳以上の人口が2007年に21%を超え「超高齢社会」となり、2013年には25%を超え、いまや65歳以上の人口が国民の4人に1人以上になっています。2025年には、国民の3割が65歳以上になると予測されています。
 介護報酬は2015年度から2.27%引き下げられましたが、それでも2兆7592億円が当初予算で充てられ、年金の11兆527億円、医療の11兆4891億円に次ぐ大きな支出となっています。今後、これらの額は大幅に増大するものと予測され、社会保障関係費および財政を強く圧迫することになります。
 介護に関しては、いまのところ介護は必要ないものの将来的に要介護状態になりそうな「要支援」の人をどのようにして要介護状態にしないかが、大きなポイントとなります。
 年齢とともに身体機能が衰えるのは当然のことですが、要介護状態になってしまうと「生活の質(Quality Of Life)」も大きく低下してしまいますし、介護にかかるコストも大幅に増えてしまいます。
 私は、要介護状態になる前に要支援のサポートを厚くして、高齢者の生活の質の向上を図るとともに、介護予算がこのまま増えつづけないよう対策に取り組みます。地域コミュニティの連携のなかで、医療の支援も得つつ高齢者の健康管理を行うことにより、これを実現してまいります。

❹急速に進む高齢化社会に対応した介護体制を確立する。

 介護は、それだけを独立した施策で行おうとすると、どんどんコストが嵩むことになります。そうならないようにするためには、医療と介護の連携を地域コミュニティのなかに根づかせる必要があります。
 そのために、在宅介護、デイケア、老人保健施設、老人福祉施設の4つが噛み合う重層的な介護体制を各地で推進すべく努めてまいります。
 具体的には、現在の公民館の一部や、廃校になっている学校の施設の一部をデイケア施設に転換したり、地域の中小病院に老人保健施設や老人福祉施設などの介護部門を新設していただくなどの施策を行っていきます。また、医師による巡回診療などのサービスをシステム化して在宅高齢者の健康管理を行い、要介護にならないよう積極的なケアを行う体制を整えていきます。

❺女性の社会進出支援策として子育て支援策を強化する
 (特に保育施設について現実に即応するフレキシブルな体制を整備する)。

 子育てこそ、教育の出発点であり、国の根幹をなす大切な事業だと、私は考えています。安倍首相は、「1億総活躍社会」実現の1つの局面として女性の働きやすい環境づくりを目指していますが、私は単に社会経済的側面からだけではなく、新たな世代の人間形成という視点からも、子育て支援をしなければならないと考えています。
 2015年4月現在、従来の保育所と幼保連携型認定こども園の定員は247万人となっていますが、いまなお待機児童は2万3167人います。さらに、待機児童の内訳をみると、3歳以上児が3265人であるのに対し、それ未満の低年齢児、とくに1・2歳児が1万6636人と、待機児童の71.8%も占めています。
 近年、子どもの虐待が問題になっていますが、親を孤立させないためにも、子どもの人格陶冶のためにも、とくに低年齢からの保育は重要な意味をもっています。そのためにも、待機児童という視点からだけでなく、いまのところ保育園に預けることを考えていない親御さんの低年齢児の保育についても、積極的に取り組んでいきたいと考えています。これは、お母さんたちに最新の子育ての情報を共有していただくためにも必要なことです。
 これまで保育所のニーズに応えられなかったのは、場所がない、保育士がいない、この2つの問題がなかなか克服できなかったためです。
 保育士については、待遇がよくないために資格のある人が働いていないという現状があります。とくに民営の施設では、アルバイトを掛け持ちしなければ生活できないという保育士の方が大勢いらっしゃいます。保育料は公定価格で決まっているので、保育士の方々の給与を上げるためには、保育料を上げるか、補助金を上げるしか選択肢がありません。これについては、補助金を上げて対応していきます。
 また、施設を設置する場所については、実績のある民営の施設に敷金などの初期費用の低利貸し付けを行うなど、特別な支援枠を設けて保育所の新設を後押ししていきます。

❻定年退職者の再就職支援で生涯現役を可能とする。

 高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)第8条で従業員の定年は60歳以上とすることが定められ、65歳未満の定年を定めている事業主は「定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」を進めなければならないことになっています。
 しかし、昨今は65歳を過ぎても体力・知力ともに現役時代に劣らない人が多く、さらなる定年延長、もしくは65歳での定年退職者の再雇用を検討しなければならない時期にきています。これは、生産年齢人口が減少しつつあるという側面からも、経験の移転という側面からも、さらには定年を迎える方たちの生き甲斐という側面からも、いまや時代の要請となっています。
 高年齢者雇用安定法18条では、65歳以下の年齢制限のある募集や採用をする場合には、その理由を示さなければならないことになっていますが、この年齢を70歳未満とします。また、ワークシェアリングの観点から、60歳以上の方については週3日もしくは週2日の勤務ができるよう、制度設計をしてまいります。
 さらに、現役時代に身につけた技術や知識を活かした起業を積極的に支援します。これは、定年退職者が仕事で身につけて技術や知識を、新たなビジネスを通して若い人たちに移転していくためにも必要なことです。このほか、経営のノウハウを若い起業家に提供するマッチングのシステムも、ベンチャー支援の位置づけから進めていきます。
 高齢者の方々に積極的に就労していただくためには、失業保険についても見直さなければなりません。現在、「65歳以前から引き続き雇用されていた労働者が65歳以上で離職したとき」に「高年齢求職者給付金」という一時金を支給することになっていますが、この年齢も70歳以上に引き上げていきます。
 このように、私は多様な働き方、多様な人生設計ができるよう積極的な施策を進めてまいります。

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