11月の一言

TPP参加については慎重に対処すべき

 TPP問題が注目を集めている。TPPとはTrans-Pacific Partnership(環太平洋連携)といわれるものである。
 2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヶ国が集まって地域的な自由貿易協定でスタートした。その特徴は例外を認めず徹底した自由貿易や投資をするという点にあり、その内容は農産物や工業製品だけではなく24分野にもわたる多面的なものである。物の貿易については10年以内に関税を撤廃、更に投資、金融、労働者の移動、知的所有権等の広範な分野で規制緩和、制度改革を進めようとするものであり加えて医療、教育、福祉、上下水道等々、従来行政が担ってきた分野への外国企業の参入の道も開くということに繋がっている。
 このような過激な市場主義であるにも関わらず関係国が4ヶ国であった時には注目されなかったが、2009年11月にシンガポールで開催されたAPEC首脳会議でアメリカのオバマ大統領がTPPへの参加を表明したことから急速に注目を集め、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアも参加を表明し、現在アメリカ主導のグローバリズムに賛同する9ヶ国で交渉が進められている。これに去る11月12日にハワイで開かれたAPEC首脳会議で野田総理はオバマ大統領に対し、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることを伝えたと言われている。ハワイ出発までの間、民主党を中心に「TPPを慎重に考える会」がスタートし多くの関係業界と共に今回のAPECでTPP参加を表明するのは時期尚早であるということを伝えるべきだという意見が結論付けられ、与党内での国論の二分が話題となってきた。
 要するに基本的にTPPは、オバマ政権がアメリカの再生の柱に輸出拡大戦略を置き、アジアへの足がかりにしようということである。5年間で輸出を倍増し200万人の雇用を作り失業問題を解決という国家輸出イニシアチブを打ち出したことが背景にある。すなわちアメリカにとっては大変重要な政策であるが、日本としては9ヶ国のうち6ヶ国とは既にEPAなる経済連携協定を結んでおり、わざわざTPPで話し合う必要はなく残りのアメリカ、豪州、ニュージーランドのような農業大国に対して関税ゼロになるTPP加入は日本の農業に壊滅的な打撃を与え、結果として食料自給率も満足に確保出来ないという国家としての危惧が感じられる。またTPPに参加しても国民総生産(GDP)の増加は10年間で僅か2.7兆円程度ということで、これでは農業改革に必要な財政支出にまわす税収増も期待できず数字的にも得るべき成果が見られない。
 またそれに加えて、この協定に参加すればありとあらゆる分野で日本の制度や日本の中における規制が撤廃されていく中で、食品の安全基準、あるいは日本の医療保険制度等々、大変大きな変更を余儀なくされる可能性も予測されるが故に、大きな反対運動に広がってきた。日本としては当然、自由貿易を標榜する国家ではあるが何もTPPに参加しなくても、ASEAN+3、あるいはASEAN+6で、十分に自己主張をしながらアジア・太平洋地域での広域連携を広げていく方法も考えられる。よって、国民生活に不安やマイナスが予想されるTPPに現段階で慌てて入ることはないだろうと考える。
 日本としては落ち着いて、来年には打ち出される9ヶ国で決まったTPPの内容を十分に精査し、国民的議論を活発にする中で、参加することが日本にとってプラスになるのかマイナスになるのかということからスタートしても決して遅きに失することはない。それが慎重に考えようという意見の根底にある。

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